
日々の受注入力に多くの時間を取られていませんか。誰でもできる単純作業に見えて、紙の注文書やFAX、複雑な入力ルールの存在によって「ミスが起こりやすい」「属人化の進行」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
近年はOCRやRPAといったツールの普及により、こうした受注入力を自動化する取り組みが現実的になっています。入力作業をシステムに任せることで、作業時間の短縮、属人化の解消、人材の有効活用といった効果が期待できます。特に人手不足が深刻化する今、自動化は単なる効率化にとどまらず、人に頼った脆弱な業務フローを解消して経営の安定性を高める手段として注目されています。
本記事では、受注入力作業を可能な限り人に頼らずに完結させる自動化の方法と得られる効果を具体的に解説します。これからご紹介する方法で、入力作業にかかる工数の大半を自動化することで削減できます。
現在事務作業がひっ迫している、改善策を模索中の方は、ぜひ自社の業務改善に向けたヒントとしてお役立てください。
受注入力業務を非効率にしている具体的な原因
日々の業務で当たり前のように行われている受注入力。一見、シンプルな単純作業に見えますが、慣れと経験がベースの入力ルールによって非常に効率の悪い作業になっています。各企業によって差はありますが、受注入力業務が非効率になる代表的な原因を見ていきましょう。当てはまるものがあるのではないでしょうか。
①商品名の表記ゆれ
同じ商品のことを指しているのに、得意先と自社で呼び方が異なる品名や型式。システムに入力するときは自社の呼び方に統一(名寄せ)して入れる必要がありますが、都度マスタを参照すれば時間がかかり、間違って別の商品名を入れってしまう、ミスも発生します。担当者によってはそのルールがあいまいでシステム内に複数の呼び方で登録された同一商品がたまってしまうこともしばしば。
- 正)「おいしい リンゴ」 例)「おいしいリンゴ」「おいしい-リンゴ」
②名前-コードの変換
上記と似ていますが、商品名をそのまま入力するのではなく、商品コードに変換したり、得意先名を得意先コードに変換したり、といったルールも、コードを暗記するか、そうでもなければ都度マスタで検索をしなくてはなりません。中には記載がなくても、A社さんの注文書の納入先はこの住所、B社さんの担当者はこの人、といったローカルルールも存在しています。
- 「おいしい リンゴ」は「101」、「甘い ミカン」は「102」
- 「株式会社ABC」の自社担当者は「ニシダ」
③得意先によって注文書の書式が異なる、読む場所が異なる
記載されている情報は同じですが、得意先ごとの独自フォーマットが存在しています。「この会社の希望納期は会社名の下」「この会社は品番を書かない」といった具合で、覚えていなければ間違いにつながりかねないのが受注入力です。

AI JIMY Paperbotは各書式に対して、どこを読むか、何に変換するか、を後続の処理がしやすいようルールを定めることができます。また、一度登録しているものであれば複数パターンをまとめてアップロードしても自動でどの書式なのか判別して処理してくれるため、人が書式ごとに仕分ける必要がありません。

受注入力を手作業のまま続けるリスク
受注入力は日々当たり前のように行われている作業ですが、手作業のまま放置しておくと大きなリスクを抱えることになります。このセクションでは現状の非効率な手作業を続けた場合、考えられる危険についてまとめます。
入力ミスが信用を失う要因に
人が手作業で入力する以上、入力ミスは避けられません。ましてや大量の注文書を、数多のルールに基づいて入力するのですからミスの発生率も高まります。
一度のミスでも取引先からの信頼を損ねる可能性があり、繰り返されれば「この会社は安心して任せられない」と判断されかねません。現場にとっては単純な入力ミスでも、企業全体にとっては大きな信用リスクを背負うことになるのです。
担当者依存による業務停滞リスク
もし担当者が休職や退職をすれば、業務がひっ迫、最悪の場合停滞してしまいます。同時に、新しい担当者を教育するのも一苦労です。できる人に依存している業務フローは脆弱です。
人手不足時代において非効率=コスト
慢性的な人手不足が叫ばれる中で、限られた人材を単純な入力作業に割き続けるのは大きな損失です。担当者は本来、顧客対応や改善活動といった付加価値の高い業務に力を注ぐべきですが、入力作業に時間を奪われてしまえば、その余力がなくなります。
さらに、単純作業中心の業務は担当者のモチベーション低下にもつながりやすく、離職リスクを高める要因にもなります。結果として、非効率が経営全体に長期的なコストをもたらすのです。

受注入力を自動化する方法
受注入力の業務改善を実現するには、単純作業をシステムに任せる仕組みが必要です。特に近年は、OCRやRPAといったツールの普及によって、従来は人が行っていた入力業務を自動化することが現実的な選択肢になってきました。ここでは、受注入力を自動化する際に押さえておくべき基本的な方法を整理してみましょう。
⓪必要なツールをそろえよう
受注入力の自動化には、主に2つのツールが必要です。
- OCR(光学文字認識):紙やPDFの注文書から文字を読み取り、後続のRPAがシステムに入力するためにデータ化する役割。今回は上記の煩雑な入力ルールに対応できるAI JIMY PaperbotというOCRを利用します。
- RPA(業務自動化ソフトウェア):OCRの結果を参照してデータをシステムに入力する役割。一例として、Microsoft社が提供する無料ツール、Power Automate Desktopを利用します。
この二つを組み合わせることで、従来人が手で行っていた「読む」「入力する」「確認する」といった作業のうち「読む」と「入力する」を自動化でき、時間短縮と入力精度の向上が実現します。

①システムに登録する必要があるのはどの項目?
自動化を導入する際に最初に取り組むべきは、「システムに登録する項目」を明確にすることです。利用しているシステムの仕様や管理の都合などから商品コードや数量、単価、納期など、OCRでデータ化する項目を決めましょう。

AI JIMY Paperbotでは書式を登録することができるため、得意先によって異なるフォーマットにも柔軟に対応できます。
②記載通り入力or変換・判断が必要?
先程の、受注入力業務を非効率にしている具体的な原因で挙げた変換や判断が必要な場合、そのルールをOCRにも教えておく必要があります。というのも、OCRとは基本的には画像上の文字をテキストデータ化するためのツールです。ゆえに、マスタを登録して、文字認識結果と突合させる機能の付いたOCRをおすすめします。
AI JIMY Paperbotには「AI類似変換」「マスタ変換・文字置換」という機能があります。自社の呼び方に名寄せしたり、得意先名を得意先コードに変換するといった設定が可能です。加えて、指定した領域の中から住所や納期を抽出する「生成AI文字列変換機能」によって記載のルールが決まっていない情報も見つけることができます。

③RPAに入力操作を教え込む
担当者が普段行っている操作を教え込むことで、自動化ルールを作成します。例えば、基幹システムを立ち上げる、受注入力の画面を選択、OCRの結果のデータを参照して「商品:」「コード」「数量」を入力、登録ボタンを押す、といった手順を一つ一つ教えることで繰り返し処理をさせることができます。
Power Automate Desktopは無料の範囲でできることの幅が広く、かつ設計もしやすく、初心者向けのRPAといった印象です。
④結果のチェック方法
OCRは便利な仕組みですが、文字認識の精度が常に完璧というわけではありません。特にFAXで届いた文字がかすれている場合や、書きなぐられた手書き文字が混ざっているものでは誤認識が発生することがあります。
そのため、自動化を導入する際は人による確認を組み合わせることが不可欠です。イメージはロボットの作業者が入力、人間の作業者がチェックをおこなう、といった具合です。
受注入力の自動化で得られる改善効果
受注入力の自動化は、単に作業を楽にするだけではありません。入力にかかる時間や人的ミスを減らすことで、業務全体の効率が高まり、担当者の負担軽減や属人化の解消につながります。さらに、人材不足が深刻化する中で、限られた人材を戦略的に活用できるようになる点も大きな効果です。いくつかの期待される恩恵を紹介します。
作業時間削減と担当者の負担軽減
受注入力は1件あたり数分の作業でも、積み重なれば大きな時間を奪います。例えば、一日100件の入力を行えば、単純計算で数時間が入力作業だけに費やされることになります。
OCRとRPAを組み合わせれば、その大部分を自動で処理でき、担当者は最終チェックや例外対応に集中できます。その結果、残業時間が減り、心身の負担軽減にもつながります。単なる効率化ではなく、働く環境そのものを改善できる点が大きな効果です。
属人化解消と業務標準化の実現
自動化を進める過程では、どの項目を入力するか、どのタイミングで確認するかといったルールを明文化する必要があります。その結果、担当者ごとに異なっていた「やり方」が統一され、業務が標準化されます。
特定の人しかできない仕事がなくなり、誰でも同じ手順で処理できる体制が整うのです。また、引き継ぎもスムーズになり、急な休職や異動があっても業務が滞ることはなくなります。属人化が解消されることで、組織全体の安定性が高まります。
人材不足の解消と戦略的な人材活用
人材不足が深刻化する中で、限られた人材を単純作業に縛りつけることは大きな機会損失です。自動化によって入力業務の工数を削減すれば、担当者により付加価値の高い業務を任せることができます。
例えば、顧客対応の質を高める活動や新しいサービスの提案など、企業の成長に直結する仕事へ時間を振り向けられるようになります。単なる人手不足対策にとどまらず「人材をどう活かすか」という経営戦略の観点で効果を発揮するのが、受注入力自動化の真の価値です。

受注入力自動化の注意点
受注入力の自動化は大きな効果をもたらす一方で、導入すればすぐにすべての課題が解決できるわけではありません。現場の業務フローを整理し、ツールを業務に合わせて調整していくプロセスには時間と試行錯誤が必要です。ここでは、自動化を進める際に押さえておきたい注意点を整理してみます。
一朝一夕では完成しない改善プロセス
業務フローの整理や必要な入力項目の定義など、準備段階から時間をかけて進める必要があります。最初から100%の自動化を実現しようとすると、かえって複雑化し失敗するケースもあります。
むしろ「まずは部分的に効率化を始める」「効果を見ながら改善を重ねる」という姿勢が重要です。業務改善はそれなりに時間と労力が必要であることを前提に取り組むの成功への第一歩となります。
試行錯誤を前提とした導入
OCRやRPAを活用した自動化では、必ず調整や修正が発生します。OCRの文字認識精度は入力する書類の形式や状態によってばらつきがあり、RPAも設定した手順に従うため想定外のケースに弱いという特徴があります。
そのため、導入初期は試行錯誤を繰り返しながら、エラーや例外処理のパターンを洗い出して対応策を組み込んでいく必要があります。完璧を最初から求めるのではなく「改良を積み重ねて精度を高めていく」という考え方で取り組むことが重要です。
まとめ:受注入力自動化で負担、工数、ミスを削減しよう
受注入力は一見単純な作業ですが、その中身は経験となれを要求する誰でも簡単にできるわけではない単純作業です。人手不足が深刻化する今、この課題を放置することは、企業にとって人材の浪費や成長の阻害にほかなりません。
その解決策となるのが、OCRとRPAを活用した自動化です。人が行っていた入力作業をシステムに任せることで、作業時間を大幅に削減し、業務の標準化や戦略的人材活用を実現できます。導入には段階的な取り組みと現場・管理職双方の協力が欠かせませんが、確実に成果を生み出せるアプローチです。
そんな受注入力自動化プロジェクトの成功には、高機能なツールと、それを熟知した専門家の支援があれば心強いです。高精度OCRにマスタ参照、生成AI、仕分け機能の搭載されたAI JIMY Paperbot と、業務改善のプロフェッショナルであるシー・システムなら業務改善を力強くサポートできます。まずは自社の課題を整理し、未来につながる一歩を踏み出してみませんか。