日々の事務作業において、手書きの書類やメモをデジタル化できずに困っていませんか？ 請求書、申込書、アンケートなど、手書きの情報を手入力するのは時間と手間がかかるものです。しかし、OCR（光学文字認識）技術を活用すれば、これらの手書き文字をスムーズにデータ化し、事務作業の効率を大幅に向上させることができます。
本記事では、主に業務改善や効率化推進を担われている方々を対象に、手書き文字データ化のメリットや具体的な手順を解説します。適切なOCRソフトウェアの選定ポイントや設定方法、導入時の注意点を知ることで、無駄な業務を減らし、より生産性の高い環境を構築しましょう。
手書き文字データ化による事務作業効率化のメリット
まずは手書き文字データ化をすることで得られる３つのメリットについて、その効果も含めて挙げていきます。
メリット１「データ入力の時間とコストを削減」
手書き書類を手入力する作業は、多くの時間と費用を消費します。例えば、請求書や注文書を毎日手入力している企業では、OCRを活用することで作業時間を50%以上削減できるケースもあります。データ入力ミスも減り、修正対応の負担も軽減されます。これにより、事務スタッフは単純作業ではなく、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
メリット２「データの検索・管理が容易になる」
手書きの書類は紙のままだと、必要な情報を探すのに時間がかかります。しかし、OCRを活用してデジタルデータ化すれば、キーワード検索が可能になり、必要な情報を即座に見つけられます。例えば、過去の申込書や顧客情報をデータベース化しておけば、問い合わせ対応のスピードが向上し、顧客満足度の向上にもつながります。
メリット３「テレワークやDX推進に対応できる」
紙ベースの情報管理では、テレワークの導入や業務のデジタル化が難しくなります。しかし、手書きの文書をOCRでデータ化すれば、クラウド上で共有・管理が可能になり、どこからでもアクセスできる環境が整います。例えば、営業部門と事務部門が遠隔で業務を行う場合、申請書や契約書をデジタル化して共有することで、承認プロセスの迅速化や業務の効率化が実現できます。
いかがでしょうか？手書き文字を文字データ化することで、多くのメリットを得られることがわかっていただけたのではないかと思います。次のセクションでは、実際にどのような書類に手書きの書類が多いのか見ていきましょう。
事務作業における手書き文字データ化の具体的な手順
では、実際の業務において、具体的にどのような書類が手書き書類として存在するのか見て行きましょう。
手書き書類の実例
紙の申請書・稟議書（社内手続き書類）
多くの企業では、経費精算や購買申請、稟議書などの社内手続きが紙ベースで行われています。手書きの申請書をスキャンしてOCRでデータ化すれば、入力作業を削減できるだけでなく、申請・承認のプロセスをデジタル化することが可能になります。特にリモートワークが増えている中で、紙の承認プロセスがボトルネックになっている企業には有効です。
手書きの会議議事録・ホワイトボードメモ
会議の際に取られる手書きメモやホワイトボードに書かれた内容は、後で共有や検索が難しくなりがちです。OCRを活用することで、手書きメモをテキストデータとして保存し、検索・編集しやすい形にできます。例えば、経営企画部門で戦略会議の議事録を手書きで取ることがある場合、それをOCRでデータ化し、ナレッジとして蓄積すれば、情報共有の質が向上します。
アンケートや顧客からの手書き資料（FAX・郵送）
顧客や取引先からの手書きのアンケートや申込書、注文書などは、いまだにFAXや郵送で送られてくることが多いです。OCRを活用すれば、これらの情報を素早くデータ化し、顧客情報管理システム（CRM）や販売管理システムへ連携できます。特に情シス部門では、これらのデータをシステムと連携させることで業務の自動化を進めることが可能です。
ここに挙げた以外にも、社内には多くの手書き書類があるのではないでしょうか？
手書き書類のデジタル変身！スキャン＆取り込みの基本
手書きの書類をデータ化するには、まず画像として取り込むことが必要です。この作業は、業務用スキャナーや複合機を活用する方法、またはスマートフォンのスキャンアプリを使用する方法のいずれかが一般的です。大量の紙書類を一括で処理する場合は、高速スキャナーや複合機が適しています。これらの機器は、紙詰まりを防ぎながら高速でスキャンでき、OCR機能を搭載したものもあるため、取り込んだ直後に文字認識を行うことも可能です。
一方、少量の書類や外出先での作業では、スマートフォンのスキャンアプリを活用すると便利です。例えば、「Adobe Scan」や「Microsoft Lens」などのアプリを使えば、手書きの申請書や会議のホワイトボードメモを即座にデジタル化し、クラウドへ保存することができます。特にスマートフォンのカメラは最近の機種では高解像度のものが多いため、適切に撮影すればスキャナーに匹敵する精度で取り込みが可能です。
取り込み時には、いくつかの注意点があります。まず、OCRの精度を向上させるために、適切な解像度でスキャンすることが重要です。標準的な手書き文字であれば300dpi、細かい文字や薄い筆記の場合は600dpi程度の解像度でスキャンすると認識率が向上します。また、OCR処理を考慮すると、カラーではなくグレースケールで保存する方が文字のコントラストが強調され、認識しやすくなる傾向があります。さらに、取り込んだデータの保存形式も重要で、検索性を考えるならOCR付きのPDF形式が最適です。JPEGやPNGでも保存できますが、ページが分割されるため、後で管理しにくくなる可能性があります。
取り込み結果が思わしくない場合、いくつかの修正方法を試すことで、精度を向上させることができます。例えば、スキャン時に文字が斜めになってしまった場合は、画像編集ソフトやスキャンアプリの「傾き補正」機能を使ってまっすぐに調整すると、OCRの認識率が向上します。また、背景に余計なノイズが入ってしまった場合は、コントラストを上げることで手書き文字をくっきりさせ、認識しやすくすることができます。特に薄い文字やかすれた筆記は、画像編集ソフトで明るさやコントラストを適切に調整することで、より鮮明に認識させることが可能です。さらに、手書きの書類が折り目や影の影響を受けている場合は、再スキャン時に紙をできるだけ平らにし、影が入らないようにすることで改善できます。こうした工夫を施すことで、OCR処理の精度を最大限に引き出し、データ化の成功率を高めることができます。
OCRで手書き文字をテキスト化する方法
手書き書類を画像化したら、次のステップはOCR（Optical Character Recognition：光学文字認識）を使ったテキスト化です。OCR技術を活用すると、スキャンした書類の中の手書き文字を認識し、デジタルテキストに変換できます。これにより、検索やコピー・編集が可能になり、業務効率が飛躍的に向上します。
OCRには、大きく分けてローカル型とクラウド型の2種類があります。ローカル型は、パソコンにインストールして使用するOCRソフト（例：Adobe Acrobat、Readiris、ABBYY FineReaderなど）で、機密情報を外部に送信せずに処理できます。一方、クラウド型は、Google DriveのOCR機能やMicrosoft OneDrive、Amazon Textractなどのクラウドサービスを利用する方法で、高精度な文字認識が可能です。クラウド型は、AIを活用して継続的に精度が向上するのがメリットですが、機密情報の取り扱いには注意が必要です。
具体的なOCRの実行手順は以下の通りです。まず、適切なOCRソフトまたはクラウドサービスを選び、スキャンした画像をアップロードします。次に、OCRエンジンが画像を解析し、文字として認識した部分をデジタルテキストに変換します。この際、手書き文字の場合は認識精度が下がることがあるため、適切なフォントや筆記スタイルの選択、事前の画像補正が重要です。最後に、OCRが出力したテキストを確認し、誤認識された部分を手動で修正します。特に、社名や専門用語は辞書に登録することで、精度を向上させることが可能です。
OCRを活用することで、手書きの書類を単なる画像データとして保存するのではなく、検索可能なテキストデータとして業務に活用できます。これにより、過去の資料を簡単に検索できるようになったり、データ入力作業を大幅に削減したりすることが可能になります。
OCRソフトウェアの選定と設定方法
本章では、事務作業に適したOCRソフトを選定するポイントをいくつか紹介したいと思います。
OCRソフト選定ポイント6選
手書き文字の認識精度
申請書や伝票など、手書き書類を扱うなら日本語の手書き認識に強いOCRを選ぶのが重要です。AIを活用したOCRは精度が高く、誤認識を減らせます。
画像補正機能の有無
スキャン時の傾きや影を補正する機能があると、OCRの精度が向上します。傾き補正・コントラスト調整機能が搭載されているかを確認しましょう。
処理スピードと一括処理
大量の書類を扱うなら、バッチ処理や自動処理機能があるソフトが便利です。複数PDFの一括処理や指定フォルダ内の自動OCR処理機能があると作業が効率化できます。
出力フォーマットと編集機能
OCRソフトによっては、Word・Excel・検索可能なPDFへの出力が可能です。議事録をWord化したり、手書きの数値データをExcelに変換できると、作業がスムーズになります。
クラウド型 vs ローカル型
クラウド型OCR（Google Drive、Azure OCRなど）はAIで精度が高いですが、機密情報の取り扱いに注意が必要です。ローカル型（Adobe Acrobat、ABBYY FineReaderなど）はセキュリティ面で安心ですが、処理能力はPCスペックに依存します。
コストとライセンス形態
OCRソフトには無料・有料の選択肢があります。無料ならGoogle Drive OCRやMicrosoft OneNote、有料ならABBYY FineReaderやAdobe Acrobatなどがあります。買い切り型かサブスク型かも考慮し、コストパフォーマンスを見極めましょう。
事務作業に適したOCRソフトの紹介
手書き文字をデジタル化するOCRソフトには、無料・有料それぞれに優れた選択肢があります。ここでは、特に事務作業向けのおすすめOCRソフトを紹介します。
無料で使える！Google Drive OCR
特徴: Google Driveには無料のOCR機能が搭載されており、PDFや画像ファイルをアップロードするだけでテキスト化できます。
メリット:
- クラウド上で処理されるため、PCの負荷が少ない
- 多言語対応で、手書き・印刷文字の両方を認識可能
- Googleドキュメントとして保存し、そのまま編集可能
デメリット:
- レイアウトが崩れることがある
- 表や手書きの認識精度は専用OCRより低め
「とりあえず無料でOCRを試したい」「Googleの環境を使っている」企業向け
高精度な有料OCR！DX Suite
特徴: 世界トップレベルのOCR技術を誇る「DX Suite」は、手書き・印刷文書ともに高精度でテキスト化できます。
メリット:
- AI OCR技術を活用し、手書き文字や非定型帳票の認識に強い。
- 定型帳票だけでなく、非定型帳票やフリーフォーマットのデータも処理できる。
- CSVやAPI連携によるデータ出力が可能で、他システムとの連携がしやすい
デメリット:
- コストが高い（月額課金制であり、小規模事業者や個人には負担が大きい）
- クラウドサービスであり、機密性の高い情報を扱う場合、慎重になる必要がある。
「手書き帳票の処理を効率化したい中小企業」 や 「他システムとの連携を考えている」企業向け
AI JIMY Paperbotとは？
AI JIMY Paperbotは、AIを活用した最新のOCRとRPA（Robotics Process Automation）が１つのサービスの中に組み込まれたソリューションです。OCRで画像からテキストを抽出するだけではなく、抽出したテキストデータを用いて、Excelの所定の位置に転記するなど、テキスト抽出後に人が行う定型業務を自動的に実行できる仕組みも併せ持ったサービスになります。
特徴:
- OCR読み取り時に、AIが補正をするため、読み取り精度が非常に高い
- 国産のソフトウェアであり、表取り込み機能など、帳票向けの機能が充実
- 単価設定が項目ではなく、ページ単位であるため、安価に抑えることが可能
- RPA機能を標準で有しており、複雑なExcelへの自動転記も容易に実現
「OCR処理だけでなく、その後のデータ整理・データ活用まで効率化したい」企業に最適。特に、会社全体の効率化を検討・推進されている経営企画や情シス部門の強い味方となります。
AI JIMY Paperbotを利用するメリット
OCRに生成AIとRPAを搭載 一つのツールでデータ入力作業を完結
画像の取り込みから取引先ごとの仕分け、手書き文字の認識、テキストデータの出力、業務システムへのデータ入力まで、一連の作業をAI JIMY Paperbotひとつで自動化できます。
無料で誰でもカンタンに使用可能
AI JIMY Paperbotは特別な技術知識は不要で、マウスだけの直感的な操作が可能です。RPAツールとの連携や専門知識が必要なAPIなどの開発作業は必要ありません。無料で利用開始できますので、カンタンに試すことができます。
自動でファイル名を変換できるリネーム機能
リアルタイム処理を行い、任意で電子帳簿保存法の改正にも対応したファイル名に自動で変換可能です。
AI類似変換で社内のマスタと連携し、文字認識が向上
日本語の認識は、手書きも含めてかなり高い精度で変換できます。間違いやすい商品名などの固有名詞は、あらかじめAI JIMY Paperbotに登録しておくことでさらに認識率が向上します。
多様な業務で活用
さまざまな業務で使用が可能です。FAXの受注入力、請求書の集計、手書きアンケートや申込書のデータ入力、作業日報のデジタルデータ化など多岐にわたる業務プロセスをサポートします。
手書き文字データ化の注意点とリスク管理
手書き文字をデータ化する際には、いくつかの注意点があります。これらを適切に対処しないと、業務効率化どころか、データの誤認識や情報漏えいといったリスクにつながる可能性があります。
注意点①：OCRの認識精度に限界がある
OCRは手書き文字を自動で読み取りますが、個人の筆跡によるクセや書き方の違いで認識ミスが発生することがあります。特に、数字の「1」と「7」や、ひらがなの「し」と「つ」などの誤認識は頻繁に起こります。
対策としては、認識精度を向上させるために、事前に手書きのルールを統一する（ブロック体で書くなど）ことが有効です。また、OCR後に人の目でチェックする仕組みを導入すると、誤認識を防げます。
注意点②：プライバシー・機密情報の取り扱い
手書き文書には、個人情報や企業の機密情報が含まれていることが多く、不適切な管理をすると情報漏えいのリスクがあります。特に、クラウド型OCRを使用する場合は、外部サーバーへのデータ送信が発生するため、セキュリティ対策が不可欠です。
対策としては、オンプレミス型のOCRを使用する、またはデータ送信時の暗号化を行い、アクセス権を適切に設定することが重要です。
注意点③：データ化後の管理と検索性
手書き文書をOCRでデータ化した後、適切に整理・管理しなければ、情報を活用できないという課題があります。ただデータを保存するだけでは、必要な情報を見つけるのに時間がかかり、かえって非効率になることもあります。
対策としては、OCRでテキスト化したデータにタグ付けを行う、ファイル名やフォルダのルールを統一することで、スムーズに検索・活用できるようにすることが大切です。
以上３つの注意点を踏まえると、手書き文字のデータ化には、「正確性」「セキュリティ」「管理のしやすさ」の3つの観点からリスク管理が必要です。
- 誤認識のリスクに対しては、OCRの精度を上げる工夫と、人のチェックを組み合わせる
- 情報漏えいのリスクに対しては、セキュアなOCR環境とアクセス管理を徹底する
- データ活用のしにくさを防ぐために、適切な整理・検索システムを導入する
これらを実施することで、手書き文書のデジタル化が業務の負担になるのではなく、効率化につながるように運用することができます。事前にリスクを洗い出し、適切な対策を講じることで、安全かつ効果的なデータ活用を実現しましょう。
事務作業での手書き文字データ化活用事例
それでは、実際の実務としてどのようなところで、手書き文字のデータ活用がされているのでしょうか？
① 契約管理業務の効率化
中小企業では、契約書の管理が紙ベースで行われることが多く、必要な契約情報を探すのに時間がかかるケースが少なくありません。特に、契約更新日や取引条件の確認が煩雑になり、管理ミスが発生することも。OCRを活用し、契約書の手書き部分をデジタル化することで、契約内容を検索可能なデータとして管理できるようになります。さらに、データベースと連携させれば、契約期限のアラート通知を自動化することも可能です。これにより、契約管理業務が効率化され、重要な契約の見落としを防げます。
② 会議メモ・議事録管理の簡素化
会議の議事録を手書きでメモすることはよくありますが、後から内容を整理するのに手間がかかるという課題があります。OCRを活用すると、手書きの議事録を即座にデジタル化でき、会議ごとにファイル整理がしやすくなるだけでなく、議題や決定事項をキーワード検索できるようになります。また、音声認識と組み合わせることで、手書きと音声を補完しながらより正確な議事録を作成できます。これにより、会議後の資料整理の時間を短縮し、迅速な情報共有が可能になります。
③ 紙ベースの申請・受付業務のデジタル化
社内の経費申請や顧客からの書類受付など、紙ベースの手続きが多い業務では、入力作業が煩雑になりがちです。特に、手書きの申請書をデータ入力する作業は、ミスが発生しやすく、担当者の負担が大きいのが問題です。OCRを導入すれば、手書きの申請書をスキャンして自動的にデータ化でき、転記ミスを削減できます。さらに、ワークフローシステムと連携すれば、データが自動的に承認フローへ送られるため、業務のスピードと正確性が向上します。
まとめ
手書き文字のデータ化は、事務作業の効率化に大きく貢献します。契約管理や会議メモの整理、紙ベースの申請業務など、手書き書類が関わる業務は多く、OCRを活用することで検索性や処理スピードが向上し、入力ミスも削減できます。導入時は、適切なOCRソフトの選定や、スキャン時の品質確保が重要です。また、データのセキュリティや誤認識の対策も考慮する必要があります。手書きデータのデジタル化は、単なる作業効率化にとどまらず、業務のDX（デジタルトランスフォーメーション）を推進する第一歩となります。適切なツールを活用し、よりスマートな事務作業を実現しましょう。
