ITによる業務改善が定着しつつある昨今において、データ変換を効率化してくれる技術がOCRです。本記事ではそんなOCR変換を活用し、業務の効率化を実現する方法を紹介していきます。
書類をデータ化し、保管する企業が増えている一方で、なかなか業務化を実現できない企業が多いことも事実です。ソフトを採用する前に、OCR変換によってもたらされるメリットや将来的な活用方法などの情報を包括的にチェックしておきましょう。
OCR変換とは?PDFのテキスト化基礎知識
まずは、「そもそもOCR変換がどのようなものか」を解説していきます。言葉の定義だけでなく、OCRを活用するメリットも合わせて確認しておきましょう。
OCR変換とはどのようなもの?
OCRとは「Optical Character Reader」の頭文字をとった言葉であり、日本語では光学文字認識機能と訳されます。もう少しわかりやすい表現を用いると、「画像の中にある文字を抽出し、テキストデータに置き換える」機能を指します。
日本のビジネス界では、「書類からテキストデータへの変換」にうってつけの機能として注目を集め、多くの企業がOCR変換機能をもつツールの採用に動き出しています。
OCR変換を活用するメリットとは
OCR変換を活用することによるメリットは、大きく分類すると「事務工数の削減」と「データ管理の効率化」です。具体的には次のようなシチュエーションにおいて、OCRツールが能力を発揮します。
事務工数の削減
取引先企業から届く、請求書や納品書などの書類に書かれている文字をテキストデータ化します。事務担当者はテキストデータ部分のみを編集またはコピー&ペーストすることで、書式の作成にかかっている工数と人為的なミスを削減できます。
データ管理の効率化
テキストデータに置き換えることで、PDFでは実施できない文字検索が可能になります。紙をファイリングして保管するスペースの削減だけでなく、いつでも引き出せる状態での保管が可能です。
大量のPDFファイル準備 OCR変換時の整理と前処理のコツ
次に大量のPDFファイルを、より効率的にOCR変換するための事前準備を紹介していきます。使用するツールごとに多少の違いこそあるものの「PDFデータを改良する」「性能の高いOCR変換ソフトを選ぶ」「書式ごとに分類する」という下準備さえしておけば、OCRツールは十分にその役割を果たしてくれるでしょう。
PDFデータを改良する
大量のPDFをOCR変換する際は、もともとのデータの状態に気を配りましょう。どんなにクオリティの高いOCR変換ソフトでも、PDFデータそのものの画像が汚ければエラーを起こす可能性が高くなります。OCR変換をする前に、テキスト認識してほしい文字が黒く潰れていないか、背景に汚れがないかを確認しておきましょう。
性能の高いOCR変換ソフトを選ぶ
PDFデータをスピーディーにOCR変換する際の2つ目のコツが、性能の高いOCR変換ソフトを選ぶことです。OCR変換を行い、PDF編集や検索をオペレーション化する場合は、ソフトの口コミやトライアル期間を活用して、使用感に問題がないことを確認しましょう。また、文字の認識精度に注目が集まりがちなOCR変換ソフトですが、バッチ処置の使用可否も事前に確認しておきたいポイントの1つです。1つのPDFファイルを対象に処理をするソフトが一般的ではありますが、複数のデータを一気にOCR変換するバッチ機能を持つソフトも販売されています。
書式ごとに分類する
データを活用するOCR変換ソフトで処理速度を高めるコツが、事前に書式ごとに分類することです。書式を統一してあれば、チェックする範囲が少なくでき、それだけでソフトの性能を発揮しやすい環境に近づけられます。複数の書類を一気に読み込むのではなく、「1つのOCR変換には1つの書式だけを対象にする」といったルールを設けることで、よりスピーディーな変換処理が可能になるでしょう。
PDFのOCR変換速度を上げる設定とツール選択
ここからは、PDFデータのOCR変換速度を上げる設定を紹介していきます。事前に確認しておきたい設定は次の2つです。
スキャナーの解像度
OCR変換はスキャナーが高解像であるほど、ソフトの性能を発揮できるとされています。ただし、解像度が高いほどデータの容量が大きくなり、処理にかかる時間が長くなる点には要注意です。300〜400dpiほどの解像度をおすすめします。
カラーは白黒に変換する
カラーの文字を自動的に白黒に置き換えてくれるソフトもありますが、スキャナーで設定することも可能です。カラーと白黒が混在すると識字率に影響することがあるため、PDF化する際に白黒に統一しておいたほうがソフトの精度が高まります。
ツールを選択する際は、事前にソフトの口コミやトライアル期間を活用して、使用感に問題がないことを確認しておきましょう。文字の認識精度が高まってきているOCR変換ソフトですが、すべてのデータを正確に読み取れるわけではありません。変換後の確認は、必須です。また、処理時間が気がかりな場合は、バッチ処置を行えるソフトを選択することで処理時間を短縮することが可能です。
大量のPDFをOCR変換する実践ガイド
ここからは、即実践に移せる作業手順を紹介していきます。ユーザーインターフェースによる違いこそあるものの次の実践ガイドを理解しておくことで、作業効率を高めることができるでしょう。
大量のPDFをOCRに変換する際の基本手順
今回はいくつかあるOCRツールの中から、WondershareのPDFelementProの作業手順を紹介していきます。具体的な手順は以下のとおりです。
OCRプラグインのダウンロード
OCR機能を初めて使用する際は、プラグインのダウンロード処理が必要です。PDFelementProのトップ画面から「編集」→「OCR」を選択することで自動的に案内が表示されるため、そのままダウンロードを行ってください。
OCR処理をしたいデータを選択
「検索」モード、「編集」モードから実施したい処理内容を選択します。テキストデータ化される点こそ共通ですが「検索」モードには編集機能がありません。
ページのカスタマイズとOCRの実行
使用する言語や修正したい文面を設定します。「次」を選択することで、OCR処理が実行されます。
OCR実行の完了を待つ
元ファイルの拡張子がPDFであれば、そのままPDFデータとして吐き出され、変換や編集、検索が可能な状態に変更されます。
大量のPDFデータを処理する場合はバッチ処理を選択
OCR処理をしたいデータをいくつか選んで「バッチ処理」を選択することで、ベイツ番号追加、透かし追加などの処理が可能です。
おすすめのOCRツールを紹介
いくつかのOCRツールを検討している場合は、有料版と無料版の違いを把握しておくとよいでしょう。今回おすすめするOCR変換ソフトは次の2つです。
PDFelement(Wondershare)
Officeのような使い勝手が好評のPDF編集ソフトです。通常のPDFelementPDFとPDFelementProの2つから選択でき、OCR変換機能は9,980円で使用できるPDFelementProにしか付与されていない機能です。無料トライアル期間あるので、使い勝手などはトライアルを利用してみるのも良いでしょう。
Googleドライブ
日常的に使用しやすく、多くのユーザーをもつフリーOCRソフトです。無料で使用できるものの、ハイクオリティのOCR機能を搭載しています。細かな画像設定を行えないという点では、PDFelementPDFに見劣りするという声もありますが、OCR変換ソフトを試してみたい方にはおすすめです。
「識字率が高い」とされるGoogleドライブですが、やはり有料ツールと無料ツールの間には、文字認識の精度に大きな差がある点には注意が必要です。一見すると「文字認識の精度=ツールの性能」と思ってしまいがちですが、実はAIを搭載しているOCRは文章を補填する作業も実施しています。そのため、AIを搭載しているソフトは、その働きにより文章全体から文字を判断、訂正しています。最新かつ高機能のOCRにはAIを搭載している製品も多く、積極的に採用することで、読み込み後に行う目視チェックなどの作業時間を大幅に削減できます。
部分的な効率化は生産性の低下を招く?
OCR変換を上手に活用することで、生産性を高められることは紛れもない事実です。ただし、「部分的な業務改善が組織全体の生産性の低下を招く」ケースがあることも把握しておきましょう。基本情報技術者をはじめとしたIT系の試験では、ベンチマーキングやBPR、BPMといった業務プロセスを改善する手法を問う問題が増加傾向にあります。
この種の問題が多くなっている要因として、それぞれの担当者の組織内での役割が重視されていることがあげられます。1つの書類を取ってみても「確実にデータ化する」「他部署からの承認を得る」など、第三者にも証明できる体制が求められます。
そして、OCRでデータに変換する業務においても、書類の扱い方の重要性は変わりません。1つの部署だけが業務を効率化したとしても、他の部署の運用にそぐわなければ、新たな手間による生産性の低下が引き起こされてしまうのです。
OCR変換後のデータ活用術~PDFから得た情報の使い道~
最後にOCRとAI技術の融合により、期待される効果を紹介していきます。これまで紹介してきたように、OCRツールにはさまざまな特徴をもつ製品が提供されています。ただし、OCR変換の進歩は目覚ましく、さらなるAI技術の応用による業務の効率化が実現されつつあることも把握しておきましょう。
特にRPAの分野は、OCR変換の活用によって効率化されると言われています。これまでの解説ではPDFデータの変換を、OCRの主な機能として取り上げてきましたが、プログラムさえあれば「テキストデータを抽出→データベースを構築→会計ソフトや帳票に自動反映」といったサイクルを構築することも可能です。
それぞれに特徴があるものの、次のようなRPAに活用できる製品も販売されています。
汎用・定型
帳票の種類こそ限定されていないものの、フォーマットが定められている帳票であれば読み取れるOCRツールです。事前に「帳票内のどこに読み取ればよいか」、また「どのような意味があるか」を指定することで、抽出精度を高めます。異なる帳票を読み取るごとに設定をする手間が生まれますが、数置くの種類の帳票に対応可能です。
汎用・非定型
帳票の種類とフォーマットが定められていない状況で使用するOCRツールです。一見すると人の手による設定が必要そうですが、AI学習による定義が行えます。帳票読み取りに必要なデータの集積を終えるまでの間は、読み取り精度が低くなることがあります。
業務特化×非定型
帳票の種類が定められているが、フォーマットが決まっていない場合に使われるOCRツールです。汎用・非定型と同様に、「フォーマットのどこになにが書かれているか」をAIに学習させることで、情報の取得が可能になります。AIがすでに「抽出済みのデータがなにを意味するのか」を理解しているため、会計ソフトといったツールとの連携も可能です。
大量の帳票をデータ化して処理するならAI JIMY Paperbotがおすすめ!
AI JIMY Paperbotを利用するメリット
誰でもカンタンに使用可能
AI JIMY Paperbotは特別な技術知識は不要で、マウスだけの直感的な操作が可能です。RPAツールとの連携や専門知識が必要なAPIなどの開発作業は必要ありません。
ひとつのツールで完結
画像の取り込みから取引先ごとの仕分け、手書き文字の認識、テキストデータの出力、業務システムへのデータ入力まで、一連の作業をAI JIMY Paperbotひとつで自動化できます。
自動でファイル名を変換
1クリックでリアルタイム処理を行い、任意で電子帳簿保存法の改正にも対応したファイル名に自動で変換可能です。
AI類似変換で文字認識が向上
日本語の認識は、手書きも含めてかなり高い精度で変換できます。間違いやすい商品名などの固有名詞は、あらかじめAI JIMY Paperbotに登録しておくことでさらに認識率が向上します。
多様な業務で活用
さまざまな業務で使用が可能です。FAXの受注入力、請求書の集計、手書きアンケートや申込書のデータ入力、作業日報のデジタルデータ化など多岐にわたる業務プロセスをサポートします。
まとめ
これまでに発生していたテキストデータ化にかけていた時間を、短縮してくれる機能がOCR変換です。請求書や納品書といったデータであることは変わりありませんが、OCRソフトを活用することで、データ形式をそのままに、指定した範囲だけをテキスト化してくれます。
また、OCR変換ソフトによってもたらされるメリットは、業務工数の削減とデータ管理の効率化です。請求書や納品書を紙で管理している企業は減少傾向にありますが、OCR変換することで、一部分の修正やPC上での検索を容易に行える環境を作り出せます。
さらに、これからOCRの導入を検討している場合は、RPAなどの分野にも応用できることを把握しておきましょう。今回は「データベースを構築することで、会計ソフトや帳票に自動反映できる」というケースを紹介しましたが、その他の分野にも応用可能です。OCR変換ソフトを取り入れるだけで、スムーズなデータ管理が可能になり、効率的な業務改革に踏み出しやすい環境を整えられるでしょう。