AI OCRの導入検討時に必読!失敗しないための5つの事例と対策

本記事ではAI OCRの導入に失敗しないために、いくつかの事例を踏まえ、導入時に確認する事項についてわかりやすく解説。AI OCRが注目されている理由、日本企業におけるDX推進の現状と課題、先行事例を踏まえ、本当に必要な要素を簡潔にまとめ説明していきます。

実際に、導入に失敗した際の事例をいくつか掲載しています。是非、参考にしてください。

目次

AI OCRの導入時に気を付けること

AI OCRはAIを用いて画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識機能のことですが、AI OCRの導入にあたって様々な課題があります。

しかし、AI OCRはうまく活用できれば、社内で大きな改善効果を出すことができます。導入検討時の失敗事例をあらかじめ認識したうえで、プロジェクトを進めることで失敗のリスクを下げることができます。

では、なぜ導入検討時に失敗するのか事例を踏まえて詳しく説明していきます。

なぜ導入に失敗するのか

AI OCRの特徴として、従来のOCRと比べ、高い認識精度が注目を浴びています。

しかし、認識精度の高さが際立ち、他の要素を見落としがちです。認識精度の高いAI OCRを導入すれば、すべて解決すると考えていると失敗につながります。

例えば、データ入力作業を自動化したい場合、AI OCR単体では文字認識をし、CSV形式のファイルで出力することはできますが、AI OCR単体にデータ入力の機能がついているわけではありません。また、帳票のレイアウトを自動で分類することもできません。スキャナの機能がついているわけでもありません。AI OCRから出力したCSVファイルを業務システムに取り込めるかどうかなど、考慮すべきポイントはいくつかあります。

AI OCRの用途はデータ入力業務の自動化に使える一つの工程に過ぎないことを認識しておきましょう。

では、実際に失敗した事例をご紹介していきます。

具体的に導入検討時に失敗した5つの事例

事例① AI OCRの文字認識率を最重要視した

AI OCRの最大の特徴ともいえる高い文字認識率ですが、現在認識率99%以上を謳う製品も登場しています。もちろん、文字認識率は製品を選ぶ際の重要な要素です。誤認識が多くなればなるほど、人間により修正する手間が増えます。文字認識率の高さは判断材料になってきます。

しかし、OCR製品を選択する際、文字認識率以外にも実際の業務に適しているか確認する必要があります。認識率は調査方法などによって、大きく左右されます。

例えば、手書きとパソコンなどによって印字された活字では認識率が大きく差があります。また、メーカーごとに認識率の基準も異なることもあります。さらに、帳票のレイアウトや文字の種類によって、各製品ごとに得意不得意があります。他にも、FAXや印刷、スキャンする機械によって同じ帳票であっても帳票全体の縮尺が異なることがあります。そうすると、本来認識したい領域を認識できないことが発生します。

運用することを考え、総合的に判断していく必要があります。最近では、請求書に特化したOCRが登場するなど、対象業務への向き不向きも考慮していきましょう。

事例② 帳票の項目欄が小さすぎた

帳票レイアウトは文字の認識率を左右する要素の一つです。スキャナによって読み取った際に、解像度が低かったりすると、項目欄が小さいと、認識できない場合が発生します。

他にも、同じ項目欄に複数の内容が記述されている場合も要注意です。例えば、住所の記入欄に郵便番号や都道府県の選択肢が含まれている帳票などでは、認識したい項目欄が分かれておらず、混在している場合も誤認識につながるエースがあります。

もし可能であれば帳票のレイアウトを見直すことで認識率が大幅に改善することがあります。

しかし、状況によって、すべての帳票を見直せるわけでありません。自社の帳票レイアウトは容易に変更できても、他社の帳票レイアウトを変更することは難易度が非常に高くなります。

変更の優先順位としては、①自社のフォーマット②フォーマットの変更を依頼できる取引先の帳票③変更できない取引先の帳票の順番で帳票の整理をしていきます。OCRにとって認識しやすい帳票にすることは、業務効率の改善に大きくつながります。

事例③ 仕分け機能がなく、複数の帳票レイアウトに対応していなかった

一般的にAI OCRは文字を認識するツールまたはエンジンのことを指します。

本来、AI OCRのエンジン自体には帳票のレイアウトを解析するツールはなく、帳票の仕分けをするツールもありません。ツールによっては、複数の帳票レイアウトを同時に認識する際はほかの機能と連携させて利用する必要がでてきます。

例えば、請求書のように各社レイアウトが異なる帳票を同時に処理したいケースがあります。他にもアンケート用紙のようにそれぞれのページでレイアウトが異なる場合も存在します。

このように、文字認識させたい書類が複数の帳票レイアウトを持つ場合、非定型帳票対応のOCR機能や仕分け機能を有したツールを利用する必要があります。

事例④ 位置ずれ調整機能がない

FAXや印刷、スキャンする機械によって同じ帳票であっても帳票全体の縮尺が異なることがあります。また、傾いていたり、読み込みたい位置が相対的にずれている場合があります。本来認識したい領域を認識できないことが発生します。

正直、認識精度には非常に影響があります。認識精度以上に影響度の高い要素といえます。

是非、AI OCRツールの中に位置ずれ補正傾き補正縮尺補正などを考慮した機能が搭載されているか確認しましょう。

ツールを選定する前には、実際の帳票を認識させてみて、どれくらい位置がずれていても問題ないか確認をしておきましょう。

事例⑤ 導入時に開発コストや構築コストがかさんだ

データ入力業務を自動化させたい場合、AI OCRツールとRPAツールを組み合わせる必要があります。この場合、開発コストが生じてきます。

RPAツールでPDFを移動させたり、AI OCRツールにAPIで認識させたり、認識状態を確認したり、認識結果のCSVファイルを出力、あるいは基幹システムへデータ入力させることができます。同時に、これらを実現させようと思うと、もちろんですが、RPAツールで自動化のフローを設計・開発する必要が出てきます。

最近は、使いやすいRPAツールも多くありますが、それでも初めて利用する人にとっては多少の学習コストが発生します。また、外部のシステム会社に開発を依頼する場合は初期開発コストが発生します。開発期間が短いものでも数週間から、半年以上かかる開発プロジェクトがあります。

事例⑥ ランニングコストに見合う改善効果が見込めなかった

改善業務では費用対効果を意識することも大事な要素です。実際に導入しようと思ったが、期待するほどの改善効果が見込めないことがあります。

具体的には、下記のように計算することができます。

改善効果 = 新たに生み出す価値 - 導入・運用コスト

実際に、とある企業で導入検討した際、AI OCRによる1枚当たりの処理コストを算出しました。

AI OCRによる認識単価として1枚当たり100円以上かかることが分かりました。さらに、AI OCRは100%の認識率ではないため、人間が校正する人的リソースのコストも含めました。

最終的には、AI OCRを導入するよりデータ入力業務を請け負っている企業にアウトソーシングで発注したほうが安いという結論になり、AI OCRの導入が見送られました。

しかし、本来は業務フローの見直しや帳票の項目数など総合的に見て、適したツールを選択できれば、導入の失敗を防げた事例でした。

実際に導入検討時に確認すべき8つの項目

導入検討時に確認しておくべき項目をいくつかご紹介します。

①AI OCRツールの実際の認識率

もちろんですが、高い認識精度を持つAI OCRを選択することにより、人間が修正する箇所も少なくなり、生産性の向上が見込まれます。

しかし、使っている帳票によっては、認識率が悪くなるケースもあります。文字の認識以外にもチェックボックスなどの認識率も確認する必要があります。実際の帳票を使って確かめてみましょう。

注意点として、認識率は帳票の作り方にも左右されますので、その点も是非考慮してください。

②帳票レイアウトの見直し

先にも述べたように、認識精度は帳票レイアウトにも左右されます。例えば、下記のような帳票だと、文字が枠からはみ出ています。書いた人にも要因はありますが、書きづらい帳票レイアウトであることも一つの要因です。

記入欄の枠が狭かったり、隣との文字の距離が近かったり、文字がかすれている帳票だったり、文字の上から重ね書き文字を書いていたり、AI OCRにとって認識しづらい環境ができてしまいます。

AI OCRが利用しやすい帳票レイアウトに見直すことで、認識精度も向上し、人間が修正する工数も減ります。中には、帳票レイアウトを見直すことで、30%ほどの認識率が90%まで向上したケースもあります。

③認識する項目数および処理枚数

一般的にOCR製品の中には、認識する項目ごとに従量課金するタイプ処理枚数ごとに課金するタイプなど、製品によって料金体系が異なります。

例えば、アンケートを集計する際に、1枚あたり50項目あるとします。

この場合、項目ごとに従量課金すると、認識単価 ×項目数が1枚あたりのコストとなります。

さらに、ひと月当たりの認識枚数を把握していくこと必要があります。おおよそのコストを算出することができます。

④利用する対象業務の見極め

そもそもOCRを使わなくてもいいことがあります。紙で集計する必要がないものも必ずあります。その場合は、デジタル端末で入力を行うなど、デジタル化を検討することも必要です。

AI OCRの導入?? それとも、デジタル端末で入力??

一方で、OCRを利用しなくてはいけないケースも多く存在します。例えば、請求書の入力業務であっても、請求書がメールでPDFが送られてくることもあれば、紙で郵送されてくるケースもあります。

また、PDFからデータを抽出したいケースもあります。2022年1月から施行された改正された電子帳簿保存法では、要件としてデータの保存区分によっては「取引年月日」「取引金額」「取引先」を検索できる状態にしておくことが求められています。このようなとき、OCRでデータを抽出し、データ保存すれば効率化を図ることができます。

業務によっては、まずは業務内容を見直し、OCRの利用を取捨選択する必要があります。

⑤AI OCRを利用するユーザーは誰なのか

実際に、利用するユーザーが誰なのかは非常に重要です。情報システム部門が利用するのか、事務作業を行っている現場の方なのかで、AI OCRへの理解度も変わってきます。AI OCRのツールの使い方は製品によって様々です。ユーザーから不満が起きる要因にもなりかねませんので、利用シーンを考え、ユーザーにとって使いやすいツール選択をしましょう。

⑥初期導入コスト

初期コストがかさむケースがあります。RPAツールとAI OCRを連携させる場合は、複雑な業務や帳票であれば、初期導入コストだけで数百万かかることもよくあります。初期導入コストも考慮して、検討を進めましょう。

⑦ランニングコスト

実際、AI OCRとRPAツールと仕分けツールを利用して、運用した際にかかるコストを算出しておきましょう。ライセンスのランニングコストだけで数100万円以上かかり、さらに運用する人件費などを含めると、もとの状態より膨大なコストがかかってる。というような本末転倒な結果にならないよう、ランニングコストを見込んで導入しましょう。

⑧実際のAI OCRの改善効果の算出指標

自動化ツールの導入時には、費用対効果の算出や改善効果の算出を求められることがよくあります。

ここでは、人件費や時間削減以外にもメリットがありますので、いくつか簡単に紹介します

①作業時間のスピードアップ

例)3時間の作業が30分に短縮 → 2時間30分の短縮

納期の短縮やサービス向上につながります。

②人件費の削減

例)1日あたり2時間削減 × 20日 × 時間単価

③採用コスト

例)採用単価(1人あたり100万)が不要に

④退職リスク

例)離職による人材やノウハウの流出を軽減。リソース不足から事業活動が滞るリスクを低減。

⑤社員のモチベーションアップ

例)集中力が切れて作業スピードやクオリティの低下を防止など

まとめ

AI OCRは従来のOCRに比べて、非常に認識率が向上しました。そのため、つい認識率に目が行きがちですが、その他の要素も非常に検討すべき事項でることがお判りいただけたのではないでしょうか。

もし、試してみたい方がいらっしゃいましたら、下記AI JIMY Paperbotは無料でお試しいただけますので、確認のためや業界比較のためにもご利用ください。

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